ある日の昼下がり、顔馴染みのお客様からGODIVAのタブレット型チョコレート(所謂板チョコ)をいただいた。
それはとってもとっても美味しかったから、中年男性一人で楽しむにはあまりにも勿体ない。
そう思った僕は、パキッ とチョコレートを半分に割り、そっと冷蔵庫に保管した
翌日の夕方、ある友人が僕を訪ねてきた。
ひょろりと長い足下には赤いブーツ、目に優しい淡いグリーンカラーのシャツ。 黒くて長いツバのサンバイザー(日焼け防止を最優先にしたマダムが時々着用しているソレ) そんな不思議な出で立ちで参上した。
僕達は年に数回程度しか会わないけれど、その度に彼はこのサンバイザーを着用している。 きっと、彼の中ではなにかしらの畏敬の念の様なものがこのサンバイザーに込められているのだろう。
よって、以後、今回の記事内ではこのサンバイザーに対し敬意を込め、彼の事を“バイザー”と呼ぶ事にする。
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(こんな感じのヤツ)
バイザーは僕の様子を見て言った。
どうした?そんなに難しい顔をして?
その時、僕は店に侵入したハエを駆除するため孤軍奮闘していた。
だが、このハエは強敵で、バシーン!と叩く度にふわりふわりと、空を舞い、くいっくいっと僕を挑発するように手をこすり合わせている。
バイザーが僕に近づいた瞬間、ハエはまた別の場所へとフワリと飛び去った
狼狽した僕は、単独でのハエの撃退を諦め、バイザーにハエの駆除を手伝って欲しいと依頼する。
彼は依頼を快諾
俺はハエを倒すのが大得意さ。
安心していい
そんなバイザーの言葉は、もはやその意味深なファッションはハエ退治を円滑に進める為の特殊なユニフォームであるのではないだろうか?
特にその黒く長いツバのついたサンバイザー。どの様にして使うかはわからないが何かしらの特別な能力が備わっているアイテムに見えなくもない。
兎に角、強烈な説得力を持つ力のある言葉に感じられた。
もちろんタダで、そんな野暮な事は言わない。
そう。僕にはGODIVAのタブレット型チョコレート(おっさんの食いかけ半分)があるのだ。
僕は冷蔵庫から半分に割っておいたチョコレートを慎重に取り出し、バイザーにこの依頼への報酬にとそのチョコレートを勧めた
いや、俺はいらないよー 甘いの好きじゃないんだわー
驚くことに、彼はGODIVAを拒絶した。
昔、とある書物(漫画本)の話で、ある村人が悪魔に好意をもたれ 、その悪魔からチョコレートを勧められる。だがその村人はそれを拒否する。それを拒否した村人は悪魔の制裁を受け、奈落の底に落とされそこで一生を過ごす。
と、言った乱暴すぎる意味不明なストーリーがあった(因みに僕の父はこの漫画本を読みながら終始シリアスな顔をキープし読後に “深いな” と一言。父に対し 浅すぎる と思った)
そんなチープな物語を思い出しながら僕はバイザーの意見を飲み込み、チョコレートを冷蔵庫にソッと戻した。
そしてバイザーは静かに、そして勇敢に魔王(ハエ)撃退を開始した。
バイザーは僕に言った
とりあえず俺がやっとくから、それまで好きな事してなよ。お店の事とかさ。
その意見に完全に甘んじた僕は、バイザーが魔王(ハエ)を撃退している間に買い物に行くことにした。
行ってくるね
おう、気をつけてねー!
背を向けた姿勢で片手をあげる彼の背中にタフネスを感じながら僕は買い物へと出掛けた。
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2時間後、店へと戻った僕は、その異様に張り詰めた雰囲気と、それと同時に流れる戦慄に圧倒されていた。
店の入り口を開けると、バイザーはまだ魔王(ハエ)と死闘を繰り広げながら額にかすかな汗、そして右手にはエクスカリバー(ハエタタキ)を握りしめ、それをブン!ブン!としならせていた
大丈夫!? もういいよ!休もう。
思わず彼に声をかけると彼が..
うるせぇ!やるしかねぇだろ!!?ここまできたらぁ!!
何処まできたと言うのだろう?
バイザーが狂喜乱舞しエクスカリバーを振り回しているのを横目に一息つこうと僕は冷蔵庫に保管していたGODIVAを取り出し一口齧った(なにをしてるんだろう僕は)
ポリっパキッ
んんーーうまいなぁーー
僕の心の声と同時に
チェ、チェ、チェチェチェチェストオオオォウ!!!
バッシーーーーーン!!!!!!
勢いよく振り下ろされたエクスカリバー(ハエタタキ)の勢いでバイザーはひっくり返り、テーブルの隣に駐車していたバイクのステップに横腹を強打する。
ゴリっ
ィィッテェエエエぇ!!!!!
さらに、その勢いでサンバイザーが頭部から独立し飛来、その後床に落下した。
そして、彼の魂の具現化でもある(勝手にそう思ってます)サンバイザーのツバは縦に割れる。その見た目はまるで ドカベンの不知火選手のソレと瓜二つだったのである(不知火選手、是非チェックしてみてね )
大丈夫!!!?
ぐぅウ...大丈夫だ...俺はやったよな?死んだか?あいつは?
そうだ。彼は魔王(ハエ)を倒したのだ。
テーブルの上に寝そべっているエクスカリバー(ハエタタキ)の先端を確認すると
そこに魔王は見当たらずGODIVAの粉塵だけが細々と付着していた。
それはきっと、さっき僕が食べたGODIVAの欠片である。彼は僕が食べたGODIVAの欠片を魔王と勘違いし“チェスト”したのである。 恥ず
ブーン …… ブーン .……
ピト…
…倒れている勇者(バイザー)の腹部付近に、魔王は再び着陸した。
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その後、バイザーは横腹の痛みに耐えられず、検査の為病院へと向かった。
そして、“肋骨骨折”を言い渡されたのであった。
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こんな事を書いている只今、現在も僕のデスクトップの周辺を、ブーン…… ブーン……と 未だ季節外れの魔王は心地良さそうに飛び回っているのだ。。。
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さて、間もなく冬が到来します。
本当に憂鬱ですが、皆様楽しく過ごしましょうね。
ではぐっどばい。