2024年7月24日水曜日

This is a confession for every xxxxx ...

瞼の裏側に、チラチラ と、優しく明るい点滅が映し出されます。そこに見える"ソレ"はまるで、古くなり誰からも相手にされなくなってしまった映写機から写し出される映像。そんな雰囲気だろうか。
そんな事をぼんやり思考していると "ジリジリジリ" 不快とも取れる音色が、耳の入り口から頭蓋骨の奥底まで高らかに響きはじめた。

この映像、音。 ソレは"日の出"を意味していた。

やれやれまいった。今日もまた

"眠れなかった"

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ふと気がつくともう、遥か昔から僕は、"睡眠"に対し苦手意識を持つようになってしまった。
そして、その状況に慣れ、自分の中の"スタンダード"な状態になってしまっている。
所謂 "不眠症" と言うヤツだ。

その中でも僕の症状は恐らく、わりと重い方なのではないだろうか。非常に酷な重労働をしてしまった日、身体が鉛の様に重く今日はイヤでも...
そんな1日であったとしても、不眠症、と言う"ヤツ"は厄介な存在で、目を閉じ仰向けになっても、俯せになっても、横を向いても、呼吸を整えても、はたまたトリッキーに四肢を大きく広げ"大の字"を決め込んでも.....
願い止まないあの"瞬間"にはなかなか辿り着く事が出来ない。睡眠にネガティブな感情を抱いた事のある全ての者が目指すユートピア。それはそう。"気絶" の地である。

そして今、この季節。ユートピアが最も遠ざかる時期。酷暑極まる"夏"

睡眠への不満を除けば言うことなし、とても好感のもてるエネルギッシュなこの季節。
願わくばこのナイーブな悩み、払拭し、そして最大限に夏を楽しみたい。その願いを胸に夏を迎え入れ、そして願い叶わぬまま"また来年"と夏を送り出す。
こうして問題は未解決のまま長い長い時間が過ぎ、気がつけばまた今年もお迎えの時がやってきた。

そんな中、1人の救世主が現れる。

同級生である彼は、僕の様な堅物を面白がり、そして受け入れてくれる数少ない友人の1人である。
お店にも稀に来店してくれる彼は、陰気で皮肉屋、"昼行灯"の様な僕とは正反対の様。
明朗快活でいつも明るく、"不健康" そう言ったモノからは非常に遠ざかった存在に僕には見えていた。

ある日、何気なく彼にその話をする。
すると、彼は楽しそうな表情でこう答える。

ああそうだったの? 実は俺もなんだよ。これ、参ったよな。大体 2.3時間寝れたら御の字だよ。酷い時には一睡も出来ない、なんて事も珍しくないんだよな。

僕は安堵していた。こんなにも楽しそうに見える彼、こんなにも元気いっぱいな彼。
そんな人間が、僕と同じ悩みをもっていたのだ。
しかも彼は"塗装屋"と呼ばれる職人であり、かなり強固な肉体労働を課せられる立場である。
そして家庭を持ち、その生活を支える立場でもあった。

長い年月をかけ、何をやっても全く好転しない状況に嫌気ばかりがさし、ネガティブな感情をズルズルと引摺りながらどこかで"眠り"を願う日々。

そんな僕にとって

睡眠に対しナイーブな日々を送るにはかなり過酷な環境の中、こんなにも楽しそうに、そして明るく健やかに過ごしている彼を知る。

それは今までで、一番の"治療"になった。

そして、不眠告白から数日後、何気ない流れで彼の家に一泊する事になる。

不眠仲間だと知った今、
彼は今まで以上に輝き頼もしく見える。どうせ眠れない二人だ。朝までどうしようもない話でもしようじゃないか。そして寝不足のどんよりとした頭を慰めひきつった右手にカップを持ち、張り付いた作り笑いを浮かべコーヒーでも飲もう。
その朝に迎える憂鬱はきっと、いつも自分が迎えいれている味気のないモノクロームの様なものではなく、コントラストの強いカラフルでエキゾチックな刺激的なモノになるだろう。 
なぜなら翌朝の僕には、同士がいるのだから。



時刻は深夜12時を回った。不眠症の人間ならばここからが本番と言ったところだ。
さあ、まずはどんな話をしようか。



ちらりと彼に目を向け、僕は驚く。



眠っている。



その後彼は Am 8時 00分 ジャストまで 1度も目を覚ますことはなかった。

しっかりと8時間睡眠をとっていた彼。

ノンレム睡眠(深い安らかな睡眠)としか思えない程弛緩しきった表情を8時間絶えず継続させていた彼。

"もう食べられないよ"

漫画でしか存在しないはずのお決まりの寝言を、見事現世に持ち込んだ彼。



君は


健康です


モノクロームが視界を占領していく中、彼はカラフルなハーフパンツに着替え朝からステーキを頬張っていた。





"いや、なんだよコイツ"





さあさあ今日も僕は



"眠れないだろう"



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とても素晴らしく楽しい日々、夏がやって来ました。
ほんの少しの憂鬱を抱えて、楽しんで過ごしましょう。



GooD BYE.