2月。
さみいよ。
今年は暖冬だ暖冬だ。なんて、そんな事言えど寒いものは寒い。どこに"暖"があるんだろうか全く。
早々に寒波が去り、とっとと暖かく朗らかな春へと向かいたいものです。
さて、そんな憂鬱な寒波に心身共に蝕まれている中、先日、私事ですが誕生日を迎えました。
その日を境に僕は38歳となったわけでありますが。
ああ..本当に時間が過ぎ去ったのだ
と、当日の早朝、洗面台に写し出された草臥れた自身の実像を目視し、そんな事をしみじみと思ったわけであります。
思い返せばロックミュージック、そんなモノに気が狂った様に卒倒したあの頃、数々の憧れのミュージシャン達が早死にだと言う事実を知った僕は、(特に27クラブと呼ばれた偉人たちにとても心惹かれたものである。所謂"中二病"と言うヤツであった)
あぁ..僕もきっと早々にこの世から去るのであろう。
何故ならば僕こそがロックに取り憑かれた新進気鋭の男なのだから。と、毎日狂喜に満ちた(フリ)思念をギターにぶつけ過ごしておりました。
が、気がつけば今の僕はどうだろうか?
ロックに取り憑かれるどころか一般思想にどっぷりと胡座をかいた男はとっくに27歳を過ぎ、38歳になっているではないか。
しかもそこそこに楽しくやらせてもらっている。
そしてやはり、鏡の前に写し出された38年分の"中古車"はそれ相応に朽ち果て、残酷なまでに自分自身にその事実を突き付けているのである。
だがしかし、皮肉にもこんな草臥れた中古車になった僕にも一抹の需要を見出だし、未だプレゼントなるモノをくれる賢者の様な方たちもおりまして、今年もありがたくポツリポツリと頂戴したわけであります。
美味しいお菓子。
興味をそそるタイトルの本。
健康グッズ。etc...
普段自分ではなかなか手に取らないであろうモノがもらえたりする。プレゼントではそう言ったある種自分の世界には無縁だった"モノや事"に出会えたりするのが楽しいものである。
そういった中でも今年、一際異彩を放つ世にも珍しいプレゼントをいただいたのです。。
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ブルルルルん!
けたたましいエンジン音を轟かせながら一台の高級車が店の駐車場で停止した。
よう!仕事中だけど寄ったわー!!
お店の近所から数分のところに住む友人が僕の誕生日前日、参上した(彼は以前ブログで書かせていただいた俺は不眠症だと偽った男である。2024年 7月 This
is a confession for ...参照 )
彼はコーヒーを注文し数十分寛ぐと
あ、そう言えば明日誕生日だったよね?おめでとう。
お互い歳取ったなー!
そう僕に言った。
いやいや、もうおめでとうなんて年齢でもないよ。
まぁ、でも、ありがとう。
僕はおじさんがおじさんから誕生日にお祝いの言葉をもらうことに異様な滑稽さを感じ、ついつい後ろ向きな返答で応対した。
だが、照れ臭さもあったが仄かな嬉しさがあったのも事実である。
さてさて、じゃあ、俺行くわ!またなー!
彼は束の間の休憩を得たあと颯爽と仕事に戻っていった。
さて僕も仕事に戻ろうか。店の入り口からすぐの大きなテーブルで寛いでいた彼の面影を片付けていると、ある事に気がついた。
ん、ない? んん? ないぞ?? あれ?
営業後コンビニにでも寄り、支払おうと思っていた自宅の電気料金の払込用紙。ソレがテーブルから消えている(そのテーブルは僕の作業台でもある為、だらしのない僕は私物をそのまま置いてしまっている事が多々あるのだ)
ここか? あそこか?
長方形のテーブルの縁を"黒魔術か何かの儀"の如し腰を大きく折り曲げた姿勢で何周もするがどこにも見当たらない。
え、なんで。
失われてしまった。最初からそこにはそんなもの存在していなかったかのように。
電気料金の払込用紙は、完璧にこの世から喪失してしまったのである。
まるでその出来事は僕に、
"支払わなくたっていいんだよ"
優しく凪ぐ春風のようにそう囁いている気がした。
いちいち払込用紙の所在等に時間を割いていられないのが大人ってもので。
そんな事はいつのまにか忘れ去り、気がつけば時刻は18時少し前、間も無くお店の閉店時間になろうとしていた...。
ブルルルルん!!!
けたたましい、心当たりのあるエンジン音を轟かせ誰かがやってきた。
オッスー!!またも寄ったぜー!!仕事終わったわー!!
彼だ。。。
だがなぜだ。なぜ日に2度も?
どちらかと言えば彼は変わり者に分類される人間に違いはないけれど、今までにこう言った行動をされた記憶が僕にはない。
ではなぜ。なぜ彼は2度も来店したのか?
彼はゆったりとこちら側に前進し、左の広角をクイッとあげ おもむろに左手をあげ、人差し指、中指、親指で軽くつまんだハガキ台サイズの"何か"をヒラヒラと団扇を彷彿させる動きであおいでいる。
むむ?よくみるとその"何か"は
払込用紙だ!払込用紙なんや!!! だがなぜ!?なぜ彼の左手に他人の家の光熱費の支払い用紙があるのだ!?しかも、あの形状はおそらく、
"控え"だ!!控えなんや!!!
コンビニの店員さんがどんなに忙しい状況下であっても必ず切り取って"こちらお客様のお控えになります"
と、手渡してくれるあの代物だ!!!
と、なると...
支払い済みだ!!!支払い済みと言う事実を意味しているんやぁあああーーたぁあああん!!!
だがなぜ!一体なぜなんだぁあああ!!?
そして彼は言った。
"ハッピーバースデー 払っといたぜ?"
驚愕した僕は
"え?"
たった1文字だけで応対した
やれやれ、と呆れた様な、それでいて無邪気な子供に対する余裕しゃくしゃくな大人の雰囲気を醸し出した様な。そんな絶妙な表情で彼は言った
"いや、だからプレゼントだよ。テーブルの支払い用紙無くなってただろ?気がつかなかったか?"
驚愕し言葉を失っている僕に向け、再度彼は左側の広角をクイッとあげ返答を待たず続けて言った
"払っといた ぜ"
キタァアアアアアアアアアアアアアアああぁああ!!!!!
先月の電気料金タダァアアアアアアアアあああんん!!!!!
かっけぇぇええええええ!!!!!!!!(実際カッコよくない。むしろ怖い。)
補足だがこの友人
遠い昔の事ではあるが、信じられないほどの世間知らずであった。
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遥か昔、彼を含めた4人でほんの数ヶ月間、都内某所で暮らしていた事があるのだが、だらしなすぎる我々は電気の支払いを忘れ電気がストップする。といった事が何度もあった。
そのうち1度だけ、電気ストップ時に彼だけが家にいた事がある。ひとりぼっちでパニックになった彼は僕に電話をしてきたのだが、僕が電話口で リビングの戸棚にある(当時そこにまとめて光熱費の払込用紙をためていたのだ)"支払いカップ"を持ってコンビニで支払ってくれと指示をした。
※"カップ"とは当時を生きた人ならばご存知であろうが払込用紙に対する通り名である。(もしかすると今現在も生きた単語だろうか?)正式には"割賦"と書き分割払いを指す単語である。
その際彼は、光熱費の支払いをした経験がなかった為、本当に信じられない事だが、戸棚にあったそれっぽい(何を持ってしてそれっぽいと判断したかは未だ不明)と思った赤いスヌーピーのマグ"カップ"を持ってコンビニの店員さんに詰め寄ったと言う伝説を残した男である。
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20年前のあの日、スヌーピーのマグカップを片手にコンビニの店内をオロオロと徘徊していた彼は
20年後の今、自分の店のテーブルの周りをオロオロと徘徊していた僕に受領書の返還を果たしたのであった。
彼はタイムトラベラーだったのだ。
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時は残酷で、止まらずに流れていくけれど。
歳を取るのは悪くないな。と、そう思う今日この頃です。
とにもかくにも"公共料金の支払い"をプレゼントでいただいたのははじめてでした。
僕はおそらく、このプレゼントを生涯忘れる事はないだろう。
皆様にも門出の時
そんな時には高価なモノも良いですが、心に突き刺さり生涯忘れられそうにないモノ、事。そんな楽しいプレゼントが届きますように。
では、またね。